AI研修・DX研修は、要件を満たす場合に人材開発支援助成金の対象になり得ます。事業展開等リスキリング支援コースの要件に当てはまれば、中小企業事業主の区分で研修経費の75%が助成の対象になり得ます(OFF-JTで合計10時間以上等の要件があり、合計10時間に満たない研修は対象外。事前の計画届と支給審査を経て後から支給され、最終判断は労働局への事前相談をおすすめします)。2026年4月8日の制度改正で同コースに設備投資加算(中小企業事業主のみ・賃金要件等あり)が新設され、同年8月3日の改正では、同日以降に提出する計画届について(経過措置あり)、同コースで汎用的な内容のDX研修が助成対象外になりました。
「AI研修を実施したいが予算が確保できない」「助成金があると聞いたが申請方法が分からない」「どの助成金を使えばいいか判断できない」——このような悩みを抱える経営者・人事担当者は非常に多いです。
本記事では、人材開発支援助成金の令和8年4月8日の改正と、令和8年8月3日の改正(事業展開等リスキリング支援コースの対象訓練と受講回数の見直し)を踏まえて、AI研修・生成AI研修で活用できる主な助成金・補助金と、申請手順から受給までの流れを解説します。人材育成支援コースと事業展開等リスキリング支援コースの助成率・限度額は、厚生労働省の令和8年度版パンフレット(人材育成支援コース・事業展開等リスキリング支援コース、いずれも令和8年8月3日版)で確認した内容です。
【2026年9月15日更新】令和8年8月3日改正の要点(事業展開等リスキリング支援コース)
- DX化・GX化に関する訓練のうち、職業・職務に間接的に必要となる内容や、職業人として共通して必要となる内容は助成対象外になりました(リーフレットでは、生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練が対象外の例、生成AIを活用して商品提案書の構成案作成などを学ぶ営業担当者向けの訓練が助成対象の例として示されています)
- 助成を受けられる受講回数の上限(同一の労働者につき1年度3回・改正前からの上限)のうち、eラーニングによる訓練(ほかの実施方法と組み合わせる場合を含む)は1回までになりました
- 経過措置があります。詳しくは厚生労働省のリーフレット「令和8年8月3日からの変更点について」と支給要領をご確認のうえ、最終判断は労働局への事前相談をおすすめします
助成率・限度額は8月3日の改正の前後で変わっていません。訓練内容が対象になるかは、令和8年8月3日以降に提出する計画届では改正後の基準で判断されます(8月2日以前に教育訓練機関と契約・申込をした訓練などの経過措置を除きます)。
【2026年4月15日更新】令和8年4月8日改正の要点
- 事業展開等リスキリング支援コース: 設備投資加算(50%・1人15万円/10人以上150万円)新設
- 人材育成支援コース: 中高年齢者実習型訓練(45歳以上対象)新設
- 人への投資促進コース: 長期教育訓練休暇制度に新規採用助成(27/45/67.5万円)・職務代行助成(75%・月上限16万円)追加
- 事業展開等リスキリング支援コース: eラーニング・通信制訓練の経費助成上限が訓練時間数にかかわらず一律15万円に見直し(中小企業事業主の場合。大企業は10万円。従来は中小企業事業主30万円・大企業20万円)
⚠️ 最終年度に関する重要な注意点
- 「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」は令和4年度〜令和8年度の時限措置。令和8年度(2026年度)が最終年度で、令和9年4月以降の継続は未確定です。活用予定の企業は早期申請を強く推奨します。
- 令和8年4月8日改正の直前、令和8年3月2日にも別の改正が施行されています(分割支給申請の導入、事業展開等リスキリング支援コースの対象訓練拡充等)。
詳細は【速報】人材開発支援助成金 令和8年4月8日改正をご参照ください。
AI研修で使える助成金の全体像
主な助成金・補助金一覧
AI研修・DX研修で活用できる主な助成金・補助金は以下の通りです。
| 制度名 | 管轄 | 助成率・補助率 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) | 厚生労働省 | (中小企業事業主・人材育成訓練)経費45%(賃金要件等で60%。有期契約労働者等は70%)+賃金助成 | 従業員のスキルアップ研修全般 |
| 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) | 厚生労働省 | (中小企業事業主)経費75%+賃金助成+設備投資加算50% | DX・新規事業に伴うリスキリング |
| キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 厚生労働省 | (中小企業事業主・有期→正規)1人40万円(重点支援対象者は80万円。いずれも各支給対象期の取組を行った場合の合計額) | 非正規→正社員への転換支援 |
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | 経済産業省(中小企業庁) | 通常枠 1/2以内(条件により2/3以内) | ITツール導入に伴う研修 |
| 地方自治体の独自助成制度 | 各自治体 | 制度により異なる | 地域の事業者向け |
本記事では、AI研修で最も活用しやすい人材開発支援助成金の2つのコースを中心に詳しく解説します。
人材開発支援助成金とは
制度の概要
人材開発支援助成金は、事業主が従業員に対して職業訓練(研修)を実施した場合に、訓練にかかった経費と訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。厚生労働省が所管しており、雇用保険の適用事業所であれば申請が可能です。
AI研修で使える2つのコース
人材開発支援助成金にはいくつかのコースがありますが、AI研修で特に活用しやすいのは以下の2つです。
| 比較項目 | 人材育成支援コース | 事業展開等リスキリング支援コース |
|---|---|---|
| 対象 | 従業員のスキルアップ全般 | 新規事業・DX推進に伴うリスキリング |
| 訓練時間 | 10時間以上 | 10時間以上 |
| 経費助成率(中小企業事業主) | 45%(人材育成訓練・正規雇用労働者等。賃金要件等で60%) | 75% |
| 賃金助成(中小企業事業主) | 800円/時間・人(賃金要件等で1,000円) | 1,000円/時間・人 |
| 経費上限(中小企業事業主・通学制/同時双方向型の通信訓練・10〜100h未満) | 15万円/人 | 30万円/人 |
| 経費上限(中小企業事業主・通学制/同時双方向型の通信訓練・100〜200h未満) | 30万円/人 | 40万円/人 |
| 経費上限(中小企業事業主・eラーニング/通信制) | 15万円/人(標準学習時間が定められたものは時間数に応じた区分) | 15万円/人(時間数にかかわらず) |
| 設備投資加算 | なし | 導入費用の50%(中小企業事業主のみ・賃金要件等あり。1人15万円/10人以上150万円・令和8年4月8日新設) |
| 申請の難易度 | やや簡単 | やや複雑 |
経費上限は受講者1人1訓練あたりの額です。経費助成の上限額に差が出るのは、主に通学制・同時双方向型の通信訓練で200時間未満の場合です。eラーニング・通信制による訓練では、どちらのコースも上限額は中小企業事業主15万円・大企業10万円です(人材育成支援コースで標準学習時間が定められているものを除く)。
人材育成支援コースの詳細
対象となる事業主の要件
以下のすべてを満たす事業主が対象です。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 訓練実施計画届を事前に提出していること
- 訓練期間中も通常通りの賃金を支払うこと
- 過去に不正受給を行っていないこと
- 労働保険料を滞納していないこと
対象となる研修の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 訓練時間 | 10時間以上(OFF-JT) |
| 訓練内容 | 職業に関する専門的な知識・技能の習得 |
| 実施方法 | 事業外の訓練機関、または事業主が自ら実施 |
| カリキュラム | 訓練の目的・内容・時間が明確であること |
AI研修での具体例
- 受講者の担当業務(営業・事務など)で生成AIを使う実習を含む研修(10時間以上の構成)
- 事業外の訓練機関が行う、データ分析の手法やAIツールの活用方法を学ぶ研修で、自社の業務データは題材として使うだけのもの(分析結果に基づく改善計画の策定など、事業活動の成果物の作成まで含むものは対象外)
人材育成支援コースのパンフレットでは、自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明も、通常の事業活動として行うものとして対象外の例に挙げられています。自社で使うAIツールの操作説明だけの研修は、対象外になり得ます。
職務に間接的にしか必要でない内容や、職種を問わず職業人として共通して必要な内容は、助成対象にならない訓練として示されています。受講者の職務との関連性や、専門的な知識・技能の習得を目的としているかは、雇用契約書や訓練カリキュラム等で確認されるため、汎用的な内容だけの研修は対象外になり得ます。
助成額の計算方法
経費助成率(人材育成訓練)
| 企業規模 | 正規雇用労働者等 | 有期契約労働者等 |
|---|---|---|
| 中小企業事業主 | 45%(賃金要件等を満たすと+15%) | 70%(賃金要件等を満たすと+15%) |
| 大企業 | 30%(賃金要件等を満たすと+15%) | 70%(賃金要件等を満たすと+15%) |
賃金要件等による割増し分は、訓練終了後に賃金要件または資格等手当要件を満たしてから、別途申請して受け取る仕組みです。
経費助成の上限額
| 訓練時間 | 中小企業事業主 | 大企業 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 15万円/人 | 10万円/人 |
| 100時間以上200時間未満 | 30万円/人 | 20万円/人 |
| 200時間以上 | 50万円/人 | 30万円/人 |
上の表は通学制・同時双方向型の通信訓練の場合の実訓練時間数による区分です。人材育成支援コースでは、eラーニング・通信制による訓練(標準学習時間が定められているものを除く)は一律「10時間以上100時間未満」の区分(中小企業事業主15万円・大企業10万円)になります。また、上限額は通常分と賃金要件等による割増し分を合算した額に対して適用されます。
賃金助成(人材育成訓練)
| 企業規模 | 1人1時間あたり |
|---|---|
| 中小企業事業主 | 800円(賃金要件等を満たすと+200円で1,000円) |
| 大企業 | 400円(賃金要件等を満たすと+100円で500円) |
賃金助成の対象は、訓練期間中に所定労働時間内で受講した時間です。所定労働時間外・休日に実施した時間や、eラーニング・通信制による訓練は賃金助成の対象になりません。
具体的なシミュレーション
厚生労働省の令和8年度版パンフレット(令和8年8月3日版)の助成率・助成額で計算した試算です。実際の支給額は、労働局の審査を経て決まります。
試算の前提(2ケース共通)
- 中小企業事業主が、正規雇用労働者等(雇用保険の被保険者)に、人材育成支援コースの「人材育成訓練」として研修を受講させる
- 研修は事業外の訓練機関が通学制または同時双方向型のオンラインで行い、すべて所定労働時間内に実施。受講者全員が全時間を受講する
- 研修費用は支給申請までに全額を支払う(助成金は訓練後の支給申請・審査を経て支給されるため、それまでは自社で立て替える)
- 「賃金要件等を満たした場合」は、訓練終了日の翌日から起算して1年以内に対象労働者全員の毎月決まって支払われる賃金を5%以上増やす(または資格等手当の支払いで3%以上増やす)要件を満たし、割増し分を別途申請して支給された場合
ケース1:半日×4回(計16時間)のAI研修、10名参加、研修費用400,000円(1人40,000円)
| 項目 | 通常分のみ | 賃金要件等を満たした場合(割増し分を含む) |
|---|---|---|
| 経費助成(40,000円×助成率×10名) | 180,000円(45%) | 240,000円(60%) |
| 研修費用のうち経費助成でまかなえない額 | 220,000円 | 160,000円 |
| 賃金助成(1時間あたりの額×16時間×10名) | 128,000円(800円) | 160,000円(1,000円) |
ケース2:2日間(計14時間)のAI研修、5名参加、研修費用300,000円(1人60,000円)
| 項目 | 通常分のみ | 賃金要件等を満たした場合(割増し分を含む) |
|---|---|---|
| 経費助成(60,000円×助成率×5名) | 135,000円(45%) | 180,000円(60%) |
| 研修費用のうち経費助成でまかなえない額 | 165,000円 | 120,000円 |
| 賃金助成(1時間あたりの額×14時間×5名) | 56,000円(800円) | 70,000円(1,000円) |
いずれのケースも、経費助成は研修費用の45%(賃金要件等を満たした場合は60%)で、残りの研修費用は自社の負担です。ケース1で賃金要件等を満たした場合は、経費助成240,000円(研修費用の60%)と賃金助成160,000円の計算です。賃金助成は受講時間中に支払った賃金の一部を助成するもので、受講中の賃金そのものは別にかかります。賃金要件を満たすための賃上げも継続的な人件費になるため、助成額と研修費用だけを比べて「負担がなくなる」とは言えません。
なお、同じケース1の研修が事業展開等リスキリング支援コースの要件に当てはまる場合は、通常分の経費助成は研修費用の75%にあたる300,000円(40,000円×75%×10名。1人30,000円で上限額の範囲内)で、残りの100,000円と受講中の賃金は自社の負担です。賃金助成160,000円(1,000円×16時間×10名)は、受講時間中に支払う賃金の一部を助成するものです。また、助成金は訓練後の支給申請と審査を経て支給されるため、それまでは研修費用を自社で立て替えることになります。このコースでは事業展開等実施計画の提出が必要で、令和8年8月3日以降に提出する計画届では、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶような訓練は対象外です(経過措置あり)。
事業展開等リスキリング支援コースの詳細
人材育成支援コースとの違い
事業展開等リスキリング支援コースは、企業が新規事業の立ち上げやDX推進、グリーン・カーボンニュートラル化などの事業変革に伴って従業員をリスキリングする際に利用できるコースです。
主な違いは、中小企業事業主の経費助成率が75%(人材育成支援コースの人材育成訓練は正規雇用労働者等で45%)であることです。経費助成の上限額は、通学制・同時双方向型の通信訓練の場合、10時間以上200時間未満の区分で人材育成支援コースより高くなります(200時間以上はどちらも中小企業事業主50万円・大企業30万円)。eラーニング・通信制による訓練では、どちらのコースも上限額は中小企業事業主15万円・大企業10万円です(人材育成支援コースで標準学習時間が定められているものを除く)。
対象となる「事業展開等」の定義
職務に関連した訓練で、以下のいずれかに該当する訓練が対象です。
| 区分 | 内容 | AI研修との関連 |
|---|---|---|
| 事業展開 | 新たな分野で必要となる専門的な知識・技能の習得(事業展開は訓練開始日から3年以内に実施予定、または6か月以内に実施したもの) | AIを活用した新サービスの開発 |
| DX化・GX化 | 企業内のDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるにあたり、関連する業務に従事させるうえで必要となる専門的な知識・技能の習得 | 生成AIを業務プロセスに組み込む担当者の訓練 |
| 人事・人材育成に関する計画 | 計画に基づき、訓練開始日から3年以内に従事する予定の職務に必要な専門的な知識・技能の習得(訓練開始日時点で従事している職務とは異なる職務に向けた訓練に限る。中小企業事業主は計画について認定経営革新等支援機関の確認が必要。定額制サービスによる訓練は対象外) | 計画の内容による |
AI研修は、主に「DX化」に関する訓練として検討することになります。ただし、令和8年8月3日以降に提出する計画届では(経過措置あり)、DX化に関する訓練であっても、職務に間接的に必要となる内容や、職業人として共通して必要となる内容は対象外です。厚生労働省のリーフレットでは、生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練が対象外、営業担当者が生成AIで商品提案書の構成案作成・文章生成・修正方法を学ぶ訓練が対象の例として示されています。
助成額の計算方法
経費助成
| 企業規模 | 助成率 |
|---|---|
| 中小企業事業主 | 75% |
| 大企業 | 60% |
経費助成の上限額
| 訓練時間 | 中小企業事業主 | 大企業 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円/人 | 20万円/人 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円/人 | 25万円/人 |
| 200時間以上 | 50万円/人 | 30万円/人 |
上の表は通学制・同時双方向型の通信訓練の場合です(定額制サービスによる訓練は1人1月あたり2万円)。eラーニング・通信制による訓練は、令和8年4月8日の改正で訓練時間数にかかわらず中小企業事業主15万円・大企業10万円になりました(通学制・同時双方向型の通信訓練と組み合わせる場合も含みます)。
賃金助成
| 企業規模 | 1人1時間あたり |
|---|---|
| 中小企業事業主 | 1,000円 |
| 大企業 | 500円 |
賃金助成の対象は所定労働時間内に受講した時間で、eラーニング・通信制・定額制サービスによる訓練は経費助成のみ(賃金助成の対象外)です。
設備投資加算(令和8年4月8日新設・中小企業事業主のみ)
厚生労働省のリーフレット「設備投資加算を新設しました」とパンフレットによると、「通常分」とは別に、導入費用の50%が加算されます。上限は支給対象労働者1人につき15万円、10人以上の場合は人数にかかわらず150万円です。主な要件は次のとおりです。
- 事業主: 中小企業事業主で、事業展開等実施計画に基づいて事業展開等に取り組み、賃金要件または資格等手当要件を満たすこと。「設備投資加算に係る設備投資実施計画」を作成し、訓練終了後、設備投資加算の支給申請日までに機器・設備等を新たに導入すること
- 訓練: 事業展開やDX化・GX化に必要な知識・技能を習得させる訓練で、通学制または同時双方向型の通信訓練(eラーニング・通信制との組み合わせも可)であり、実技の訓練等で機器・設備等を実際に使用すること
- 機器・設備等: 実技の訓練等で実際に使用する機器・設備等と同種で、事業展開等に資するものであること。導入費用が10万円以上であること。購入のほか、リース契約・ライセンス契約、既存の機器・設備等の変更も対象で、データベース構築・システム導入・専用アプリ開発に係る経費も対象
- 対象外の例: 汎用事務機器などの通常の事業活動の維持のために用いられるもの、パソコン・タブレット端末・スマートフォンとその周辺機器、自宅などに設置するテレワーク用通信機器など
AI研修で検討する場合は、研修の実技で実際に使うシステムや機器と同種のものを、事業展開等のために導入するかどうかが判断の軸になります。パソコンやその周辺機器は対象外のため、PCを買い替える費用には使えません。リース契約・ライセンス契約の場合は、導入日から1年以上継続して契約する見込みが必要で、導入費用は当初の契約期間の総契約額から1年分を算出します。
賃金要件・資格等手当要件について(重要): 設備投資加算を受けるには、対象労働者の毎月決まって支払われる賃金を、訓練終了日の翌日から起算して1年以内に5%以上増加させる(賃金要件)か、資格等手当の支払いを就業規則等に規定したうえで手当を支払い、賃金を3%以上増加させる(資格等手当要件)ことが必要で、いずれも全ての対象労働者について満たす必要があります。人材育成支援コースでも、同じ要件を満たすと助成率・助成額が割増しになります(事後に別途申請)。研修後の賃金改定・処遇改善まで含めて計画しましょう。
人材育成支援コースとの使い分け
| 判断基準 | 人材育成支援コース(人材育成訓練) | リスキリング支援コース |
|---|---|---|
| 研修の目的 | 職務に関連した専門的な知識・技能の習得 | 事業展開・DX化・GX化などに伴う知識・技能の習得 |
| 経費助成率(中小企業事業主) | 正規雇用労働者等45%(賃金要件等で+15%) | 75% |
| 賃金助成(中小企業事業主・1時間あたり) | 800円(賃金要件等で+200円) | 1,000円 |
| 経費助成の上限額(中小企業事業主・1人1訓練・通学制/同時双方向型の通信訓練) | 15万円(10〜100h未満)・30万円(100〜200h未満)・50万円(200h以上) | 30万円(10〜100h未満)・40万円(100〜200h未満)・50万円(200h以上) |
| 経費助成の上限額(中小企業事業主・1人1訓練・eラーニング/通信制) | 15万円(標準学習時間が定められたものを除く) | 15万円(時間数にかかわらず) |
| 申請の手間 | 比較的シンプル | やや複雑(事業展開等実施計画の提出が必要) |
AI研修の内容が、事業展開やDX化に伴って特定の職務で使う知識・技能の習得にあたる場合は、助成率の高いリスキリング支援コースの要件に当てはまるかを先に確認するとよいでしょう。1人あたりの研修費用が高く、上限額の差が効いてくるのは、主に通学制・同時双方向型の通信訓練で200時間未満の場合です。eラーニング・通信制では、どちらのコースも上限額は中小企業事業主15万円・大企業10万円のため、上限額の違いはコース選びの理由になりません(人材育成支援コースで標準学習時間が定められているものを除く)。どちらのコースでも、汎用的な内容だけの研修は対象外になり得るため、計画届を出す前に管轄の労働局へ事前相談することをおすすめします。
助成金申請の流れとスケジュール
全体の流れ
助成金の申請は以下の6つのステップで進めます。
Step 1:研修計画の策定(計画届の提出期限より前に、余裕をもって)
- 研修の目的・内容・対象者・日程を決定
- 研修会社の選定と見積もり取得
- 助成金の対象要件を確認
- 職業能力開発推進者の選任と、事業内職業能力開発計画の策定・労働者への周知(計画届を出す前に必要)
Step 2:訓練実施計画届の提出(訓練開始日の6か月前から1か月前まで)
- 「職業訓練実施計画届」を作成(事業展開等リスキリング支援コースは「事業展開等実施計画」も提出)
- 研修のカリキュラム・日程表を添付
- 管轄の労働局に提出(窓口・郵送のほか、雇用関係助成金ポータルでの電子申請も可。電子申請にはGビズIDが必要。郵送は労働局に届いた日が提出日)
Step 3:研修の実施(計画通りに実施)
- 計画届に記載した内容・日程通りに研修を実施
- 出席管理を漏れなく行う(出席簿、タイムカード等)
- 研修資料を保管する
Step 4:支給申請書の提出(訓練終了日の翌日から2か月以内)
- 支給申請までに、訓練にかかった経費を全額支払っておく
- 支給申請書を作成
- 必要書類を添付して労働局に提出
- 研修の実施報告書、出席記録、経費の領収書等を添付
Step 5:労働局による審査(期間は案件や労働局の状況によって異なります)
- 書類審査が行われる
- 不備がある場合は修正・追加書類の提出を求められることがある
- 必要に応じて現地調査が行われる場合もある
Step 6:支給決定・入金
- 審査を通過すると支給決定通知が届く
- 指定口座に助成金が振り込まれる
スケジュール例(研修の日程に合わせた目安)
| 時期 | やること |
|---|---|
| 計画届を出す前 | 研修計画の策定、研修会社の選定・見積もり取得、職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定・周知 |
| 訓練開始日の6か月前から1か月前まで(例: 研修開始の1か月前までに計画届) | 職業訓練実施計画届の提出(事業展開等リスキリング支援コースは事業展開等実施計画も) |
| 訓練期間中 | 計画どおりに研修を実施し、出席記録や研修資料を保管 |
| 支給申請まで | 研修費用を全額支払う(助成金の支給までは自社で立て替え) |
| 訓練終了日の翌日から2か月以内 | 支給申請書の提出 |
| 支給申請後 | 労働局による審査(期間は状況により異なる) |
| 審査後 | 支給決定・入金 |
| 賃金要件等を満たした後(人材育成支援コース) | 要件を満たす賃金などを3か月継続して支払った日の翌日から起算して5か月以内に、割増し分を別途申請 |
申請時の注意点とよくあるミス
注意点1:事前届出が必須
最も重要な注意点は、研修開始前に訓練実施計画届を提出しなければならないことです。研修を実施してから「助成金を申請したい」と思っても、事前届出がなければ申請できません。
注意点2:訓練時間は10時間以上が必要
半日(3〜4時間)の研修1回だけでは10時間に満たないため、助成金の対象外となります。複数回に分けて合計10時間以上になるようにカリキュラムを設計してください。
注意点3:出席管理の厳格化
受講者の出席記録は助成金審査の最重要書類の一つです。以下の点に注意してください。
- 全受講者の出席簿を作成し、本人の自署またはICカード打刻で記録
- 遅刻・早退・欠席があった場合は正確に記録
- オンライン研修の場合はログイン記録を保管
- 通学制・同時双方向型の通信訓練では、受講時間数が実訓練時間数の8割以上の受講者が支給対象です(特定の訓練機関の訓練を修了した場合などの特例があります)
注意点4:経費の証拠書類を保管
研修に関する経費のすべての領収書・請求書を保管してください。
| 必要書類 | 注意点 |
|---|---|
| 研修会社からの請求書 | 研修内容・日程・金額が記載されていること |
| 領収書 | 宛名・金額・日付・但し書きが正確であること |
| 振込明細 | 銀行振込の場合は振込証明書 |
| 研修資料 | 当日使用したテキスト・スライドのコピー |
| 出席簿 | 全日程分の原本 |
よくある申請ミスと対策
| ミス | 結果 | 対策 |
|---|---|---|
| 事前届出を忘れた | 申請不可 | 研修決定と同時に届出準備を開始 |
| 訓練時間が10時間未満 | 対象外 | カリキュラムの時間を事前に確認 |
| 出席簿の不備 | 不支給リスク | 毎回の研修で記録を残す |
| 計画と異なる内容で実施 | 不支給リスク | 計画変更時は事前に届出 |
| 申請期限(2ヶ月)を超過 | 申請不可 | カレンダーでリマインド設定 |
社労士への依頼のメリットと費用
社労士への依頼を検討する理由
助成金の申請手続きは様式や添付書類が多く、不備があったり要件を満たしていなかったりすると支給されないことがあります。社会保険労務士法により、報酬を得て助成金の申請書類の作成や提出の代行を行えるのは社会保険労務士(社労士)です。事業主が自社で申請することもできますが、社内に手続きに慣れた担当者がいない場合は、社労士への依頼を検討するとよいでしょう。
社労士に依頼するメリット
- 申請書類の不備を減らしやすい:専門家のチェックを受けられる
- コースの検討:自社の状況に合った助成金・コースについて相談できる
- スケジュール管理:計画届・支給申請・割増し分の別途申請などの期限を一緒に管理できる
- 労働局とのやり取り:提出の代行や審査中の問い合わせへの対応を依頼できる(依頼範囲は契約によります)
- 他の助成金の相談:AI研修以外の助成金についても相談できる
研修会社側で対応できるのは、計画届に記載する訓練内容・カリキュラムの情報のご提供や、研修側で発行する書類のご用意までです。申請書類の作成・提出の代行は、社会保険労務士にご相談ください。
社労士への依頼費用
社労士への報酬(着手金の有無、成功報酬の割合、顧問契約の要否など)は事務所ごとに異なります。複数の事務所から見積りを取り、次の点をあわせて確認しましょう。
- 依頼する範囲(計画届の作成、支給申請、賃金要件等を満たした場合の割増し分の申請まで含むか)
- 不支給になった場合や、訓練が中止・延期になった場合の報酬の扱い
- 顧問契約が前提かどうか
社労士の選び方
- 助成金申請の経験があること(これまでの対応内容を確認)
- 人材開発支援助成金の対応経験があること(助成金の種類は多いため、コースの要件に詳しいかが大切)
- 初回相談の条件(無料かどうか、相談できる範囲)が分かること
- 報酬体系が明確であること(見積りで内訳を確認)
- レスポンスが早いこと(助成金は期限管理が重要)
その他のAI研修関連補助金
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
IT導入補助金は、令和7年度補正予算事業から「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わりました。事務局に登録されたIT導入支援事業者が提供するITツールの導入費用を補助する制度で、ソフトウェアとあわせて導入研修などの役務費用が対象になり得ます。どのツールが登録されているかは、事務局サイトのITツール検索でご確認ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率(通常枠) | 1/2以内(条件により2/3以内) |
| 補助額(通常枠) | 5万円以上450万円以下(プロセス数により区分) |
| 対象 | ITツール導入に関連する経費 |
| 注意点 | 研修単体ではなくツール導入とセットで申請 |
地方自治体の独自助成制度
各都道府県・市区町村で独自のDX推進・人材育成関連の助成制度が設けられている場合があります。
確認方法
- 各自治体の産業振興課・商工課に問い合わせ
- 企業支援ポータルサイト「ミラサポplus」で検索
- 地元の商工会議所に相談
国の助成金と地方自治体の助成金は併用できるケースもあるため、両方を確認することをおすすめします。
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まとめ:助成金を活用してAI人材育成を加速させよう
AI研修で対象になり得る人材開発支援助成金は、事業展開等リスキリング支援コースの要件に当てはまれば、中小企業事業主の区分で研修経費の75%(大企業は60%)が助成の対象になり得ます。最終判断は労働局への事前相談をおすすめします。助成は事前の計画届・訓練の実施・支給申請と審査を経て後から受け取る仕組みで、研修費用はいったん全額を支払う必要があります。主なポイントを整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 幅広い研修で検討できるコース | 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) |
| 事業展開・DX化に伴う研修向け | 事業展開等リスキリング支援コース(令和8年8月3日以降に提出する計画届では汎用的な内容は対象外。経過措置あり) |
| 経費助成率(中小企業事業主) | 人材育成訓練45%(正規雇用労働者等。賃金要件等で+15%)、リスキリング支援コース75% |
| 最重要ルール | 訓練開始日の6か月前から1か月前までに訓練実施計画届を提出すること |
| 訓練時間の要件 | 10時間以上のOFF-JT(10時間に満たない半日・1日の研修は対象外) |
| 申請書類の作成・提出代行 | 社会保険労務士の業務(報酬は事務所ごとに見積りで確認) |
まずは研修会社に、訓練時間(10時間以上)や職務との関連性など要件に沿ったカリキュラムを組めるかを確認し、対象になり得るかは計画届の前に管轄の労働局へ事前相談しておきましょう。申請書類の作成・提出を外部に依頼する場合は、社会保険労務士に相談してください。
当社のAI研修では、計画届に記載する訓練内容・カリキュラム情報のご提供と、研修側で発行する書類のご用意まで対応します(申請書類の作成・提出の代行は社会保険労務士にご依頼ください)。補助金については、見積書(当社発行)のご用意と、対象になり得るかの考え方のご説明までとなります。
AI研修・助成金活用のご相談は、以下のサービスページからお気軽にお問い合わせください。