国の「人材開発支援助成金」と自治体の補助金・助成金は、組み合わせること自体が一律に禁止されているわけではありません。ただし厚生労働省のパンフレットには、同一の経費、賃金、訓練実施を対象として他の助成金や補助金等を申請する場合、どちらか一方しか支給されない場合がある(併給調整)と明記されています。 同じ研修の費用を二つの制度から受け取る前提は立てられないため、「どの研修・経費にどの制度を使うか」と「それぞれの期限」を最初に確認することが出発点になります。本記事では、国の助成金単体を扱う記事ではカバーしきれない、自治体の制度と組み合わせるときの確認点を、公的な資料で確かめられる範囲で整理します。
AI導入率はまだ伸びしろが大きく、社員のAIリテラシー強化を急ぐ企業ほど研修費用の捻出が課題になりがちです。ただし助成金は訓練後の支給申請と審査を経て支給されるもので、研修費用はいったん全額を自社で支払う必要があります。
まず押さえる原則|同じ経費・研修は「併給調整」の対象
補助金・助成金の組み合わせを考えるとき、公的な資料で確かめられる原則は次の2つです。
- 制度を組み合わせること自体は一律に禁止されていない
- 同一の経費・賃金・訓練実施を対象に複数の制度へ申請すると、どちらか一方しか支給されない場合がある(併給調整)
人材開発支援助成金のパンフレットは、併給調整の対象として「経費」「賃金」に加えて「訓練実施」も挙げています(事業展開等リスキリング支援コースのパンフレットでは「同一の訓練受講、経費、賃金等」)。たとえば同じ研修の受講料を国の助成金と自治体の制度の両方に申請することは前提にできません。同じ研修について受講料以外の経費だけを自治体の制度に回す場合も、併給調整にあたらないかの確認が必要です。同パンフレットは、詳細はそれぞれの助成制度を所管する都道府県労働局・自治体・団体などに問い合わせるよう案内しています。支給要領にも併給調整の規定があり、たとえば都道府県から「認定訓練助成事業費補助金」を受けている場合は、人材開発支援助成金の経費助成は行わないと定めています。
もう一つの前提が、事業主が訓練経費を全額負担することです。パンフレットは、返金を受けることなどにより申請事業主が訓練経費を全て負担していない場合は支給要件を満たさないとしています。人材開発支援助成金は、支払った訓練経費の一部等を助成する制度です。
(出典:厚生労働省 人材開発支援助成金 人材育成支援コース パンフレット 令和8年8月3日版 11・35ページ、事業展開等リスキリング支援コース パンフレット 同 11・39ページ、人材育成支援コース 支給要領 06063・事業展開等リスキリング支援コース 支給要領 0906)
主軸となる国の制度|人材開発支援助成金
生成AI研修の費用補助で中核になるのが、厚生労働省の「人材開発支援助成金」です。受講者の職務に直接関連する訓練を、OFF-JT(通常の業務を離れて行う訓練)として実施する場合が対象で、生成AI研修も要件を満たせば対象になり得ます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所管 | 厚生労働省(窓口は各都道府県労働局・ハローワーク) |
| 主な対象コース | 人材育成支援コース(人材育成訓練)、事業展開等リスキリング支援コース など |
| 助成の対象 | OFF-JTの訓練経費(経費助成)と、受講時間中の賃金の一部(賃金助成。eラーニング・通信制による訓練は経費助成のみ) |
| 経費助成率 | 人材育成訓練:正規雇用労働者等は中小企業事業主45%・大企業30%(賃金要件等を満たすと+15%)、有期契約労働者等は70%(+15%)/事業展開等リスキリング支援コース:要件を満たす場合、中小企業事業主75%・大企業60% |
| 賃金助成(1人1時間あたり) | 人材育成訓練:中小企業事業主800円・大企業400円(要件を満たすと割増し)/事業展開等リスキリング支援コース:中小企業事業主1,000円・大企業500円 |
| 時間の要件 | 実訓練時間10時間以上(昼食等の休憩や移動の時間、対象外のカリキュラムの時間は数えない) |
| 必須手続き | 訓練開始日の6か月前から1か月前までに「職業訓練実施計画届」を労働局に提出 |
| 支給の流れ | 訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請し、労働局の審査を経て支給(それまでは研修費用を自社で立て替え) |
(出典:厚生労働省 人材育成支援コース パンフレット 令和8年8月3日版 3・11・15・33ページ、事業展開等リスキリング支援コース パンフレット 同 3・11・12・39ページ)
最重要ポイントは「訓練開始前の計画届提出が必須」であることです。研修を実施してから後追いで申請しても受給できません。経費助成には1人1訓練あたりの限度額があり、要件は年度の途中で変わることもあるため、申請前に最新のパンフレットで確認し、管轄の労働局に相談してください。当社のライト(半日)・スタンダード(1日)は単体では10時間に満たないため対象外です。合計10時間以上になるよう組んだ研修(Claude Code業務導入研修(合計10〜20時間)・伴走定着(組織)など)は対象になり得ます。伴走定着(組織)で対象になり得るのは研修(OFF-JT)部分で、運用ルールの設計などの支援は対象外になり得ます。Claude Code研修の設定代行など、訓練以外の費用も対象外になり得ます。
【2026年9月19日更新】令和8年8月3日改正の要点(事業展開等リスキリング支援コース)
- DX化・GX化に関する訓練でも、職業・職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させるものや、職業・職務の種類を問わず職業人として共通して必要となるものは助成対象外になりました。リーフレットでは、生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練が対象外の例、生成AIを活用した商品提案書の構成案作成などを学ぶ営業担当者向けの訓練が対象の例として示されています。人材育成支援コースでは、こうした内容は改正前から対象外です
- 助成を受けられる受講回数の上限(同一の労働者につき1年度3回。改正前からある上限)のうち、eラーニングによる訓練(ほかの実施方法と組み合わせる場合を含む)は1回までになりました
- 経過措置があります。8月2日以前に計画届を提出した訓練は従前の支給要領が適用されます。8月3日以降の提出でも、事業外訓練で教育訓練機関との契約・申込が8月2日以前の場合(事業内訓練は、関連する契約・申込・発注のいずれかが8月2日以前の場合)は、令和8年5月14日改正の支給要領が適用されます
助成率・助成額は8月3日の改正の前後で変わっていません。詳しくは厚生労働省のリーフレット「令和8年8月3日からの変更点について」と支給要領(1401・1402)をご確認のうえ、最終判断は労働局への事前相談をおすすめします。
組み合わせる相手|自治体の補助金・助成金
都道府県や市区町村の中には、DX推進や人材育成について独自の補助金・助成金を設けているところがあります。名称・対象経費・補助率・申請時期・国の制度との併用の扱いは制度ごとに異なるため、本記事では特定の制度名や補助率は挙げません。所在地の自治体の公式ページで最新の募集要項を確認し、次の点を押さえてください。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 対象経費 | 研修の受講料が対象か、ITツールの導入など研修以外の経費が対象か |
| 国の制度との併用の扱い | 募集要項に、国の助成金など他の制度との併用・重複に関する定めがあるか |
| 同じ研修に国の助成金も使うか | 使う場合は、併給調整にあたらないかを労働局と自治体の窓口の両方に確認する |
| 申請の時期 | 研修や契約の前に申請が必要か、募集期間はいつまでか |
| 支給の時期 | いつ支給されるか(立て替えがどのくらいの期間必要か) |
(国の助成金の併給調整の出典:厚生労働省 人材育成支援コース・事業展開等リスキリング支援コース パンフレット 令和8年8月3日版 11ページ。自治体の制度の内容は、各自治体の募集要項で確認してください)
経費の割り当てで押さえておきたいのが、AIツールの導入費用は人材開発支援助成金の対象経費ではないことです。パンフレットは、AI研修とAIツールの導入をセットにしても、ツールの導入費用を研修費用として申請することはできないと注意しています(人材育成支援コース パンフレット 35ページ、事業展開等リスキリング支援コース パンフレット 22ページ)。ツールの導入費用については、自治体の制度や、中小企業庁の「デジタル化・AI導入補助金」(旧:IT導入補助金)の対象になり得るかを、それぞれの公募要領で別に確認することになります。なお、事業展開等リスキリング支援コースの設備投資加算(中小企業事業主のみ)では、他の助成金や補助金等の支給に係る機器・設備等(支給申請中を含む)や、パソコン・タブレット端末などは対象外と明記されています(同パンフレット 37ページ)。
国の助成金を使わない研修(たとえば合計10時間に満たない研修)について、自治体の制度が使えるかを調べるという考え方もあります。対象になるかは、その自治体の制度の要件次第です。
併用を考えるときの3ステップ
実際に二つの制度の利用を考えるときの手順を3ステップで示します。
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研修と経費ごとに、使う制度を決める 研修の受講料・受講中の賃金・ツールの導入費などを一覧にし、どれにどの制度を使うかを決めます。同じ研修(訓練受講)に関わる経費や賃金を二つの制度に申請すると、どちらか一方しか支給されない場合があります。同じ研修で両方の制度を使いたい場合は、申請前に労働局と自治体の窓口に確認します。
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国の助成金は計画届の期限から逆算する 人材開発支援助成金は、訓練開始日の6か月前から1か月前までに職業訓練実施計画届を提出する必要があります。研修日程を決めたら、この期限と自治体の制度の申請時期を並べてスケジュールを引きます。
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研修費用は全額を自社で支払う前提で資金計画を立てる 人材開発支援助成金は、支給申請日までに事業主が訓練経費を全額負担していることが要件で、支給は訓練後の審査を経てからです。返金などで事業主の負担が減る取り決めがあると、支給要件を満たしません。
この順序で確認すると、「計画届の期限を過ぎて国の助成金が受けられなかった」「同じ研修を二つの制度に申請して一方が支給されなかった」といった失敗を避けやすくなります。
確認と申請の流れ(例)
| 時期 | アクション |
|---|---|
| 研修の日程を決める段階 | 国の助成金のコース要件と自治体の制度の募集要項を確認し、どの研修・経費にどの制度を使うかを決める |
| 訓練開始日の6か月前から1か月前まで | 人材開発支援助成金の職業訓練実施計画届を労働局へ提出 |
| 自治体の制度が定める時期 | 自治体の制度に申請(事前申請が必要か、募集期間はいつまでかは制度ごとに確認) |
| 研修実施 | 受講の記録やカリキュラムなど、支給申請に必要な書類をそろえる |
| 支給申請日まで | 研修費用を全額支払う |
| 訓練終了日の翌日から2か月以内 | 人材開発支援助成金の支給申請。労働局の審査を経て支給・不支給が決まる |
(出典:厚生労働省 人材育成支援コース パンフレット 令和8年8月3日版 4・11・33ページをもとに作成。自治体の制度の時期は制度により異なります)
助成金を検討するときの研修の選定基準(中立な基準)
助成金を検討するときは、研修の内容が受講者の職務に直接関連しているかに加えて、申請に必要な書類が整うかも確認します。中立的な選定基準を挙げます。
| 選定基準 | 確認ポイント |
|---|---|
| OFF-JT要件への適合 | 実訓練時間10時間以上で、実施時間・カリキュラムが明示されているか |
| 業務関連性の説明 | 受講者の職務に直接関連する内容で、その関連を計画届に書ける形で示せるか(汎用的なプロンプトの作り方だけで終わる研修は対象外になり得る) |
| 研修側の書類 | カリキュラム・受講証明・請求書など研修側で発行する書類をそろえてくれるか/申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士に依頼できる体制か |
| 費用の説明 | 助成金で研修費の負担がなくなるかのような説明をしていないか(厚生労働省のパンフレットが、不適正な勧誘として注意を呼びかけている) |
| 助成金活用の経験 | 助成金を活用した研修の実施経験があるか |
| 内容の自社カスタム | 自社業務に合わせて演習を設計できるか |
当社のAI研修は、計画届に記載する訓練内容・カリキュラム情報のご提供と、研修側で発行する書類のご用意に対応します(申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士にご依頼ください)。助成金で研修費がかからなくなるといったご案内はせず、要件と限度額を確認しながら研修の時間設計をご相談いただけます。
まとめ|事業別CTA
国の人材開発支援助成金と自治体の制度を組み合わせるときは、「同じ経費・賃金・研修を二つの制度に申請すると、どちらか一方しか支給されない場合がある(併給調整)」ことを前提に、どの研修・経費にどの制度を使うかを先に決めることが出発点です。人材開発支援助成金は訓練開始日の6か月前から1か月前までの計画届が必要で、支給は訓練後の審査を経てからです。併給調整にあたるかの最終判断は、労働局と自治体の窓口への事前相談をおすすめします。
費用面の不安で研修導入をためらっている場合は、当社のAI研修サービスをご検討ください。自社業務に合わせたカリキュラム設計と、計画届に記載する訓練内容・カリキュラム情報のご提供、研修側で発行する書類のご用意に対応します(申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士にご依頼ください)。まずは自社の準備状況を無料のAI研修・AI活用の診断ツールで確認するところから始めるのもおすすめです。