2026年4月8日、厚生労働省が人材開発支援助成金の大幅な制度改正を実施しました。事業展開等リスキリング支援コースの「設備投資加算」新設、人材育成支援コースの「中高年齢者実習型訓練」新設、人への投資促進コースの「新規採用助成・職務代行助成」追加、そしてeラーニング・通信制訓練の経費助成上限見直し——。本記事では、AI研修・DX研修を検討している中小企業の経営者・人事担当者向けに、改正内容の要点を分かりやすく解説します。
令和8年4月8日改正の4つのポイント
厚生労働省が2026年4月8日に公表した『人材開発支援助成金(令和8年4月8日版)』パンフレットには、次の4つの大きな改正が盛り込まれました。
| 改正項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 設備投資加算新設(導入費用の50%・1人15万円/10人以上150万円) |
| 人材育成支援コース | 中高年齢者実習型訓練新設(45歳以上対象) |
| 人への投資促進コース | 長期教育訓練休暇制度に新規採用助成・職務代行助成追加 |
| コース共通 | eラーニング・通信制訓練の経費助成上限を一律15万円に見直し |
設備投資加算の新設と中高年齢者実習型訓練の追加は、AI・DX人材育成を進める中小企業にとって追い風となる改正です。一方、eラーニング上限の見直しは実質的な引き下げとなるため、研修形式の選択に注意が必要です。
ポイント1:事業展開等リスキリング支援コース「設備投資加算」新設
設備投資加算とは
事業展開等リスキリング支援コースの訓練に併せて、訓練で習得したスキルを活用するための機器・設備等を新たに導入した場合、その導入費用の50%(中小企業のみ)が追加で助成される新制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成率 | 導入費用の50%(中小企業のみ) |
| 上限 | 支給対象労働者1人につき15万円、10人以上で150万円が限度 |
| 対象 | 中小企業事業主 |
| 対象機器の要件 | 訓練で実際に使用する機器と同種、10万円以上、訓練終了後〜支給申請日までに新たに導入 |
| 対象外 | パソコン・タブレット・スマートフォン・汎用事務機器・空調設備・特殊用途以外の自動車・顧問料等 |
出典:厚生労働省『人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)令和8年4月8日版』
AI研修での活用イメージ
生成AI研修で設備投資加算を活用する場合、以下のような機器が対象になり得ます。
- 高性能ワークステーション(ローカルLLM実行用)
- GPUサーバー(推論・ファインチューニング用)
- 業務用AIツールの導入(一定要件を満たすもの)
- AI開発環境構築のための専用機器
ただしパソコン・タブレット・スマートフォンは対象外であり、「通常業務のために使う機器」は助成対象になりません。訓練内容との直接的な関連性が必要です。
経費助成限度額は令和7年度と同水準
事業展開等リスキリング支援コースの経費助成限度額そのものは、令和7年度から変わっていません。
| 訓練時間 | 経費助成限度額(中小企業) |
|---|---|
| 10時間以上〜100時間未満 | 30万円 |
| 100時間以上〜200時間未満 | 40万円 |
| 200時間以上 | 50万円 |
出典:厚生労働省『人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)令和8年4月8日版』
令和8年4月8日改正の目玉は、あくまでこの経費助成に**「設備投資加算」を上乗せできるようになった**点です。AI機器・DX関連機器の導入を検討中の中小企業にとって、研修と機器投資を同時に進める大きなインセンティブとなります。
ポイント2:人材育成支援コース「中高年齢者実習型訓練」新設
制度の概要
45歳以上の労働者(訓練開始日時点)を対象に、OJT(実務研修)とOFF-JT(座学研修)を組み合わせた訓練に対して助成される新コースです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 45歳以上(訓練開始日時点) |
| 訓練形式 | OFF-JT+OJT の組み合わせ |
| OFF-JT経費助成率(中小企業) | 60%(賃金要件等を満たす場合:75%) |
| OFF-JT経費助成率(大企業) | 45%(賃金要件等を満たす場合:60%) |
| OFF-JT賃金助成(中小企業) | 800円/時間(賃金要件等を満たす場合:1,000円/時間) |
| OJT実施助成額(中小企業) | 1人1コースあたり10万円(賃金要件等を満たす場合:13万円) |
出典:厚生労働省『人材開発支援助成金(人材育成支援コース)令和8年4月8日版』
なぜ「中高年齢者」が新設されたのか
日本の労働人口は高齢化が進んでおり、45歳以上の従業員が社内の半数を占める企業も珍しくありません。これまでの助成制度では、若年者や非正規雇用から正社員化する労働者が主な対象で、正社員として働く45歳以上のベテラン社員をリスキリングするための助成メニューは限られていました。
今回新設された中高年齢者実習型訓練は、まさにこの空白を埋める制度です。「ベテラン社員を新たな職務やAI活用業務にシフトさせたい」という企業ニーズに応える内容になっています。
AI研修での活用例
生成AI研修の中高年向けカスタマイズプログラムと組み合わせることで、以下のような活用が可能になります。
- 45歳以上の管理職が現場でChatGPT・Claudeを使いこなすためのリスキリング研修
- ベテラン営業社員がAIを活用して提案資料作成・顧客分析を行うためのOJT研修
- 工場・現場作業のデジタル化に伴い、現場ベテランをデータ分析・AIツール活用人材に育成する訓練
ポイント3:人への投資促進コース「新規採用助成・職務代行助成」追加
制度の概要
人への投資促進コースの「長期教育訓練休暇制度」に、新たな加算制度が追加されました。休暇中の代替人員確保にかかる費用を支援する内容です。
| 加算名 | 助成内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 新規採用助成(中小企業のみ) | 27万円(30-90日未満)/ 45万円(90-180日未満)/ 67.5万円(180日以上) | 休暇中の労働者の代替人員を新規採用した場合 |
| 職務代行助成(中小企業のみ) | 代行業務費用の75%・月上限16万円 | 社内の他の労働者が休暇中の労働者の職務を代行した場合 |
出典:厚生労働省『人材開発支援助成金(人への投資促進コース)令和8年4月8日版』
なお、いずれの加算も30日未満の休暇は支給対象外です。
「教育訓練休暇を取らせたくても業務が回らない」の課題解消
中小企業にとって長期の教育訓練休暇制度は、「制度は良いけれど、現実には業務が回らず使えない」という状況が続いていました。
今回新設された新規採用助成と職務代行助成は、まさにこの課題に対応しています。
- 新規採用助成: 休暇中の代替人員を新たに採用する場合の人件費補助
- 職務代行助成: 既存社員が休暇中の同僚の業務を代行する場合、代行業務に伴う費用の75%(月上限16万円)を助成
AI・DX人材育成での活用例
- 社員を大学院のAI・データサイエンス課程に送り出す
- 専門的なeラーニング・ブートキャンプに長期間参加させる
- 外部の研究機関・企業との共同研修プログラムに参画させる
これらの長期リスキリングは、これまで「時間とお金の余裕がある大企業しか実施できない」というイメージがありましたが、新設された加算制度により、中小企業でもチャレンジしやすくなりました。
ポイント4:eラーニング・通信制訓練の経費助成上限見直し
重要な注意点:上限が実質引き下げに
令和8年4月8日改正では、全コース共通でeラーニング・通信制訓練の経費助成上限が見直されました。中小企業の場合、従来は訓練時間に応じて最大30万円だった上限が、改正後は訓練時間にかかわらず一律15万円に変更されています。
| 研修形式 | 改正前(中小企業) | 改正後(中小企業) |
|---|---|---|
| eラーニング・通信制 | 訓練時間に応じて最大30万円 | 一律15万円 |
| OFF-JT(集合・対面) | 時間別(10-100h 30万円等) | 変更なし(時間別・従来どおり) |
eラーニング主体で研修を設計している企業にとっては、実質的な上限引き下げとなるため、注意が必要です。一方で、OFF-JT(集合研修・対面研修)の経費助成限度額は従来どおり維持されているため、研修形式の選択が助成金の受給額に直結する改正となっています。
そのほかの共通改正
令和8年4月8日改正では、他にも以下の共通改正が行われています。
- 事業展開等リスキリング支援コース: 定額制サービス(サブスク型研修)の支給対象変更(10時間以上の要件追加)
- 事業展開等リスキリング支援コース・人への投資促進コース: 事業主と密接な関係を持つ者との間で実施される訓練について、講師謝金・施設借上費・受講料を経費助成対象外に
- 教育訓練休暇等付与コース: 支給申請タイミングの見直し(制度導入日から3年経過前でも、支給要件を満たせば申請可能に)
改正後の全コース助成額早見表
令和8年4月8日改正後の主要な助成内容をコース別にまとめます。
事業展開等リスキリング支援コース(中小企業・OFF-JT)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 経費助成率 | 75% |
| 賃金助成 | 1,000円/時間 |
| 経費助成限度額 | 10-100時間:30万円 / 100-200時間:40万円 / 200時間以上:50万円(令和7年度と同水準) |
| 設備投資加算(NEW) | 導入費用の50%(1人15万円/10人以上150万円) |
| eラーニング経費助成上限 | 一律15万円(改正で見直し) |
| 期限 | 令和8年度末までの時限措置 |
人材育成支援コース(中小企業・中高年齢者実習型訓練)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| OFF-JT経費助成率 | 60%(賃金要件等で75%) |
| OFF-JT賃金助成 | 800円/時間(賃金要件等で1,000円/時間) |
| OJT実施助成額 | 10万円/人(賃金要件等で13万円/人) |
| 対象 | 45歳以上の労働者 |
| 期限 | 恒久的 |
人への投資促進コース(中小企業・長期教育訓練休暇制度)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 新規採用助成(NEW) | 27万円(30-90日未満)/ 45万円(90-180日未満)/ 67.5万円(180日以上) |
| 職務代行助成(NEW) | 75%・月上限16万円 |
| 期限 | 令和8年度末までの時限措置 |
出典:厚生労働省『人材開発支援助成金(各コース)令和8年4月8日版』
ROI試算例:設備投資加算を活用した生成AI研修
ケース:中小企業・従業員10名が150時間のAI研修+GPUワークステーション導入
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 研修経費(10名×20万円) | 200万円 |
| GPUワークステーション導入費(2台) | 100万円 |
| 合計投資額 | 300万円 |
| 経費助成(75%、上限40万円×10名) | ▲150万円 |
| 賃金助成(1,000円×150時間×10名) | ▲150万円 |
| 設備投資加算(50%、100万円×50%) | ▲50万円 |
| 助成金合計 | ▲350万円 |
この試算では、新設の設備投資加算と既存の経費助成・賃金助成を組み合わせることで、実質負担を大幅に軽減できる計算です(ただし実際の支給額は審査結果により変動します)。
ROI計算
研修後、当社の実績では10名体制で月100時間以上の業務削減効果が出ています(時給換算3,000円で月30万円、年間360万円の人件費節約)。
設備投資ゼロでも高いROIが見込めますが、新設の設備投資加算を活用すれば、AI関連機器の導入負担を大幅軽減しながら学習環境を整備できるため、中長期的に見てさらに高いROIが期待できます。
注意点と申請時のポイント
時限措置に注意
今回の改正で新設・拡充された制度のうち、以下は令和8年度末までの時限措置です。
- 事業展開等リスキリング支援コース(設備投資加算を含む)
- 人への投資促進コース(新規採用助成・職務代行助成を含む)
令和9年4月以降は制度が継続するか、内容が変わるかは現時点で未確定です。活用を検討している企業は、早めの申請を強くおすすめします。
賃金要件等の注意
中高年齢者実習型訓練・設備投資加算・その他多くの制度で、上位の助成率・助成額を得るには「賃金要件等を満たす」必要があります。具体的には、訓練終了日から1年以内に対象労働者の賃金を5%以上増額、または資格等手当を支給して賃金を3%以上増額することが求められます。単なる研修実施ではなく、研修後の賃金改定・処遇改善まで含めた中長期的な人材育成戦略が必要です。
eラーニング中心の研修を検討中の企業は要注意
今回の改正で、eラーニング・通信制訓練の経費助成上限が一律15万円に見直された点は、eラーニング主体の研修を計画している企業にとって実質的な影響があります。OFF-JT(集合・対面研修)と組み合わせる、または訓練形式そのものを再検討することで、助成金受給額を最大化できる可能性があります。
計画届提出期限
すべてのコースで、訓練開始日の6ヶ月前〜1ヶ月前までに計画届の提出が必須です。「4月中に研修を開始したい」と考えた場合、計画届は3月中には労働局に到着していなければなりません。スケジュール管理に注意してください。
当社のAI研修は改正後の助成金申請に対応
株式会社課題解決プラットフォームのAI研修プログラムは、令和8年4月8日改正後の人材開発支援助成金の要件を満たすカリキュラム設計になっています。
対応プランと助成金の組み合わせ例
| 当社プラン | 価格(税抜) | 適用できる助成金例 |
|---|---|---|
| ライトプラン | ¥150,000/人 | 人材育成支援コース(人材育成訓練) |
| スタンダードプラン | ¥300,000/人 | 事業展開等リスキリング支援コース(75%助成対象) |
| プレミアムプラン(伴走型) | ¥100,000/月・人 | 人への投資促進コース(自発的職業能力開発訓練) |
※価格はすべて税抜。実際の助成金適用可否・支給額は審査結果により変動します。
当社は以下のサポートを提供します:
- カリキュラム・計画書の作成サポート
- 訓練実施計画届・支給申請書類の作成支援
- 労働局への事前相談の同行・代行
- 助成金対応カリキュラムのカスタマイズ
- 研修後の賃金要件充足のためのアドバイス
まとめ:今すぐ動くべき3つのアクション
- 自社の状況を棚卸しする — 対象となる労働者数・希望する研修内容・導入したい機器をリストアップ
- 管轄の労働局に事前相談する(無料) — 令和8年4月8日改正後の要件で自社が対象になるか確認
- 計画届の準備を開始する — 研修開始日を仮決定し、1ヶ月前の提出期限から逆算してスケジューリング
令和8年4月8日改正は、中小企業がAI・DX人材育成に投資する絶好のタイミングです。設備投資加算・中高年齢者実習型訓練・新規採用助成・職務代行助成という新設制度を最大限活用し、自社の競争力強化につなげてください。ただし、eラーニング中心の研修では上限が引き下げられた点にも留意が必要です。
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